教えて!藤森病院

病気や治療のこと

Q.下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)とはどのような病気でしょうか?
足の静脈が太く浮き出たものを下肢静脈瘤といいます。非常に多い疾患でして、40歳以上の8.6%が治療の対象となるような下肢静脈瘤をもっているという報告があります。


このように静脈瘤の太さや性状によって4つに分類されますが、治療を希望して来院される患者さんの8割以上が、この伏在静脈瘤というタイプです。このように美容的な悩みの原因になりやすですし、いろいろな症状を有することが多く、また進行してきますと皮膚病などの合併症も起こしやすいことから、このタイプには手術をお勧めしています。


Q.下肢静脈瘤の原因を教えて下さい。
原因は静脈弁の異常です。

まず足の静脈の解剖ですが、筋肉の中を走る深部静脈と表在静脈に分けられ、表在静脈の主なものに大伏在静脈と、小伏在静脈があります。
静脈は逆流を防止する弁のおかげで1方向にしか流れないようになっていますが、伏在静脈の弁は壊れやすく、そうなると血液が逆流をおこして流れがとどこおるようになり、徐々に静脈がふくれて静脈瘤ができてきます。

この写真のように、大伏在静脈が原因ですと足の内側に、小伏在静脈が原因ですと、ふくらはぎに静脈瘤が発生することが多いです。


Q.どのような人がなりやすいのでしょうか?

性別では女性に頻度が高く、妊娠や出産をきっかけに発症することもあります。加齢とともに増加していき、遺伝的な要素も関係しています。長時間の立ち仕事をする方に特に多く、このような方は環境を変えにくいことから進行しやすいといわれています。

Q.下肢静脈瘤になるとどのような症状が出てくるのでしょうか?
動脈によって運ばれた血液は静脈を経て心臓に戻リますが、下肢静脈瘤になると足の静脈血の還流が悪くなって、さまざまな症状がでてきます。

足の重だるさ、むくみ、痛み、ほてりなどの症状がよく出現し、特に立っている時に症状が重くなることが多いです。また、睡眠中でも急に足の筋肉がつる、いわゆるこむら返りも起こりやすくなります。


Q.やはり治療しないでいると進行していきますか?
大きく分けて、手術後保存的治療があります。

下肢静脈瘤の要因は、立ち仕事などの生活環境によることが大きく、環境が変わらなければ徐々に悪化していくことがよくあります。下肢静脈瘤は決して命にかかわる病気ではありませんが、進んでいきますと、この写真のように皮膚炎から色素沈着を起こしたり、さらに進みますと皮膚潰瘍が出現したり、治りにくい病態に移行していきます。こうなると治療もしづらくなっていきますので、皮膚病変を合併する前の治療をおすすめしています。


Q.どのような治療があるのでしょう?

浮き出ていないような細い静脈瘤であれば、硬化療法という選択肢があります。これは皮膚を切らずに直接静脈瘤に硬化剤を注射し、血管を潰して静脈瘤を治す方法です。


上の写真は網の目状静脈瘤という細い静脈瘤に対して行った硬化療法です。とても簡便で体の負担の少ない治療ですが、太い静脈瘤には適していません。また静脈弁異常による伏在静脈瘤に対しては、硬化療法単独では根治的治療とはなりません。
日常生活での心がけでも症状を軽くさせ、静脈瘤の悪化を防ぐ可能性があります。


長時間立つことをなるべく避ける、外出時や立ち仕事で静脈疾患の治療・予防に効果的な弾性ストキッングを着用する、なるべく足を高くして寝るようにする、などが効果あると思われます。

Q.外来受診された患者さんは、どのような診察を受けるのですか?

足に太く浮き出た静脈を確認できれば静脈瘤と診断できますが、手術をすべきか、またはどのような手術が適しているかはカラードップラーで診断します。大伏在静脈もしくは小伏在静脈の逆流はあるか、深部静脈に異常はないかなどをみますが、この検査自体は全く痛みを伴わず、簡単に診断することができます。


Q.手術の場合はどのような手術になるのでしょうか?

かなり前から伏在静脈を引き抜くストリッピングという根治性の高い治療が行われてきましたが、近年はもう少し体の負担の少ない治療として、数カ所で静脈をしばって逆流を止める結紮術と、注射で静脈瘤を潰す硬化療法の組み合わせたものが主流となりました。藤森病院でも長年この治療を行ってきましたが、血管内レーザー治療が保険適用となったことをきっかけに2011年からレーザー治療を導入しました。この病院では現在までに約700人に対してレーザー治療を行っています。


Q.血管内レーザー治療の適応とメリットを教えて下さい。
私どもは今のところ、一番頻度の高い大伏在静脈瘤に対してレーザー治療を行っています。

実際、手術を受けられる患者さんの約8割がレーザー治療の適応となっています。大伏在静脈に光ファイバーを通してレーザーで血管の内側を焼く治療法で、いずれ血管は吸収されて無くなるため、ストリッピング術と同等の根治性が得られます。さらに殆どの患者さんが皮膚切開をしないので、このように美容的にも優れていると言えます。


Q.血管内レーザー治療はどこでも受けられる治療なのですか?

上記のように施設基準がありまして、研修やトレーニングをうけた実施医がいること、脈管専門医などのスペシャリストが常勤していること、循環器内科や血管外科と速やかな連携が取れることなどの条件を満たしたうえで、血管内レーザー焼灼術実施・管理委員会から認定を受けた施設に限られています。

Q.血管内レーザー治療について詳しくお話して下さい。
では、藤森病院での治療の実際を紹介いたします。

大伏在静脈の合流部から膝のあたりまでがレーザー照射範囲となります。手術の直前にドップラーエコーで確認しながら大伏在静脈の走行に沿って印をつけます。



手術台に寝て頂き手術開始です。膝の高さで大伏在静脈にシースという細い管を挿入し、エコーでみながら血管の周囲に全長にわたって特殊な麻酔薬を注入していきます。
これはTLA麻酔といって、通常の麻酔薬を10倍に薄めて止血剤などを混ぜたものです。大量に使用できますので広範囲の麻酔が可能で、血管以外のやけど予防も兼ねています。


シースに光ファイバーを挿入し、ファイバー先端からレーザーを発射します。シースと一緒にファイバーを抜きながら足の付根から膝に向かって伏在静脈をゆっくりと焼いていきます。だいたい3~4分で焼灼は終了しますが、点滴の麻酔も使いますので、意識のないうちに終わってしまいます。


膝から下の静脈瘤は、これもしっかりTLA麻酔を行った上で、特殊な器具を用いて小さく開けた穴からすべて切除していきます。重症例でなければ縫うような皮膚切開はしません。
最後に強めの包帯を巻いて終了となります。片脚で約30分の手術時間です。

Q.術後はどのくらいの安静が必要でしょうか?
藤森病院では基本的に経過観察のために一泊入院としています。

手術翌日にドップラーエコーで焼灼の状態を確認し、問題がなければ特殊な弾性ストッキングを履いて退院となります。
退院後は日常的な作業の制限はありません。1週間後と1か月後に外来受診していただきますが、2週間もすればほとんどの運動が可能となります。



Q.血管内レーザー治療に合併症はないのですか?
血管内レーザー治療は基本的に安全な治療ですので、命を脅かすような重篤な合併症は極めてまれと思われます。

しかし、皮下出血や大腿部痛などの軽度の合併症は比較的よく起こります。このような皮下出血は、徐々に下に広がっていきますが、通常2~3週間で完全に消失します。大腿部の痛みやつっぱり感はほぼ必発します。鎮痛剤を内服していただきますが通常は1~2週間でおさまります。

伏在静脈の合流部について説明しますが、この太いのが深部静脈で、こちらが伏在静脈です。
注意を要する合併症として、深部静脈との合流部付近にできる血栓があります。増大して深部静脈血栓症や肺塞栓症など重篤な合併症をきたしかねないので、術後のドップラーエコーでの確認が重要となります。とても稀ですが、このような大きな血栓を認めた場合は、点滴や内服による抗血栓療法を行います。


Q.血管内レーザー治療は増えているのでしょうか?

上のグラフは、藤森病院における過去10年間の治療実績です。2011年からレーザー治療が保険適応となり、当院でもレーザー治療を導入したところ、このように急激に件数が増えてきました。


Q.とても多くの方がレーザー治療を受けられていますが、安心して受けられる治療と考えてよさそうですね。

私どもはこの3年間で約700人の患者さんに対してレーザー治療を行ってきました。肺梗塞などの重大な合併症は1例もありませんでした。焼灼部の痛みや皮下出血は比較的多くみられますが、術後1週間でほぼ消失し、1か月後の再診時には、ほとんどの患者さんが静脈瘤の消失と症状改善に満足されています。つい最近ですが、さらに効率よく焼灼でき、合併症の少ない新しい機器がいくつか認可されましたので、今後はより安全で確実な治療が期待できると思います。

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